Part2:大気圏突入
効果音提供:Sword様
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「見せてもらおうかしら、ひびきの軍のMSの性能とやらを!」
真っ赤に塗装されたザクが光の乗るMガンダムに迫る。光も肉眼でそれを確認すると、携帯していたビームライフルを向け、照準をあわせた。
「響介くんのいるレジェンド・ベルは絶対沈めるわけにはいかない!・・てええ!」
照準のセンターに赤いザクを捕らえた瞬間、光はビームライフル発射する!だが、完全に直撃したと思われたビームは宇宙の暗黒の中に消え、赤いザクもどこかに消えていた。
「え、はずした!?・・あ、あの赤いザクはどこ!?」
完全にとらえたはずの目標を逃し、おどおどしてしまう光。そこへ下からそのザクが迫ってきた!
「若いわね、これで終わりよ!」
詩織はほくぞ笑むと、態勢が崩れている光のMガンダムにライフルを発射する!
ドゴォォォ!!
「きゃああああああああ!!!」
外からくる強い衝撃に機体を激しく揺さぶられ、光は思わず絶叫をあげてしまう。が・・・
「!! そんな、直撃のはずよ!」
それをもってしても、Mガンダムはノーダメージだった。そのあまりにも堅牢な装甲に、詩織はおもわず唖然としてしまう。
その隙に、光はなんとか態勢を立て直そうと頭部のバルカンを詩織のザクに向けて発射した。しかし、詩織はそれさえも卓越した操縦でかわし、すばやくMガンダムの懐に飛び込むと、その「みぞおち」にキックをおみまいした!
ばきぃ!
「あうううう!・・こ、これが・・たたかい・・なの?」
詩織に一方的に攻められ、光は初めて戦場の恐怖というものを知った。全身から震えがとまらない。
「ダ、ダメ、このままじゃ、やられちゃう!」
そんな光の不安をよそに、さらに3機のザクが現れる!
「う、うわああああああ!!」
ズキュウウン!!
ズキュウウン!!
ズキュウウン!!
光は自身の恐怖を紛らわすようにやみくもにビームライフルを連射した。
「う、うおお!」
自分たちに向かって無数に飛んでくるビームに、詩織の援護に来たきらめき軍の兵士たちは怯えていた。
「当たらなければどうということはないわ!」
そんな部下たちの怯えを詩織はその一言で一刀両断し、兵士たちをたきつける。
「よ、ようし!」
その一言で吹っ切れた一人の兵士が光のMガンダムに向かって突撃しようとした。が、運悪く無数に飛んでくるビームの一つに当たってしまった!
「うわあああああ!」
チュド〜〜ン!!!!
その瞬間、ザクの一機が爆発した。
「い、一撃で、一撃で・・撃破!?・・こ、このMSは戦艦の主砲なみのビームが扱えるというの!」
詩織はMガンダムのビームライフルの予想以上の威力にわずかに戦慄した。もちろん、戦慄していたのは詩織だけではない。援護に来た兵士たちにいたっては混乱すらしていた。
「い、一撃でザクを・・よーし、これなら!」
敵機を一機撃墜したことによって光は吹っ切れ、いまだ混乱しているザクに冷静に照準をあわせてトリガーを絞る。
ズキュウウン!!
「う、うわあああ!」
チュド〜〜ン!!!!
次の瞬間、敵のザク部隊は詩織のザクを残して全滅した。そして、一機残された詩織のザクに向かってレジェンド・ベルから弾幕放火が飛んでくる!それにあわせ、光のMガンダムもビームライフルを発射していた。
「ちぃ、撤退する!」
詩織のザクはその放火の雨を上手くかわし、後退していった。
「Mガンダムの性能をあてにしすぎだわ!戦いはもっと有効に行うべきよ!」
「あ、わ、な、なんですってぇ!」
なんとかレジェンド・ベルの安全を確保し、無事に帰還できた光は琴子からそんな言葉を食らっていた。それに反発したことで、光と琴子はちょっとした口論になった。
「甘ったれないで!Mガンダムをまかされたからにはあなたはパイロットなのよ!この船を守る義務があるの!」
「わ、分かってます!だから私だって精一杯やってきたんですよ!それなのに、そんな言い方って…」
「・・こう言わざるを得ないのが現在の私たちの状況なのよ。もうやれないっていうなら、今からでもサイド7に帰りなさい。」
「や、やれるとは言い切れない・・けど、やるしかないのよ。私は貴方が…」
「ええ、憎んでくれていいわよ。Mガンダムの整備をしておきなさい。響介を使うといいわ。」
琴子はそうあっさり言い放ち、艦長シートに戻った。
ルナツーからの補給艦コロンブスが到着し、レジェンド・ベルは弾薬とパーツ、それにMSを2機の補給を受ける。
その補給物資を元に、響介はMS(主にMガンダム)の整備を行っていた。
「ふぅう、とりあえず、これでOKかな?」
左手で汗をぬぐいながら上から降りてくる響介に光はタオルと食事を渡した。
「はい、おつかれさま!」
「おう、サンキュ光!」
そしてすぐそこにあったコンテナに響介と光は腰を下ろし、二人並んで食事を取り始めた。
「ごめんね響介くん、整備を任せちゃって。」
「いや、気にしなくていいよ。俺、機械触るの好きだし。それにしてもこのMガンダム、すごいMSだよ。装甲や火力はもちろんだけど、関節部のバイパス回路がすごくよくできてるんだ。これなら、うまく仕上げれば本物の人間みたいな動きができるんじゃないかって思う。」
あいかわらず響介は機械のことになると話が止まらない。だが、今はそれがとてもたくましく思える光だった。
「あれに、応用したいな…」
「へ?あれって?」
その光の疑問に響介は一瞬だけにやっとすると、すぐ近くに置いてあった自分のノートパソコンを立ち上げ、光に一つのCGを見せた。
「!! こ、これは!」
そこにはよくできた人型機動兵器の全景フレームが出ていた。
「俺のオリジナルMS・ゲシュペンストさ。Mガンダムのパーツがやたらと余分にあまってたみたいだから、そいつを元に組み立ててみようかなってね。」
実際、現在レジェンド・ベルにはMガンダムがもう2〜3機作れそうなくらいのパーツがあった。が、Mガンダムほどの高性能機は一から組み立てるのはけっこう難しい。それに、ここにその設計図があるわけでもないのだ。そこで、響介は自分が組んだ設計図をもとにMガンダムと性能を似せたオリジナルを作ろうと計画していたのだった。
「(そう、これがあれば俺も光の援護ができる)」
現在、戦艦レジェンド・ベルは負傷したひびきの軍正規兵に代わり、サイド7の避難民たちがクルーとなっている。
「琴子さん、これからどこへ向かわれるのですか?」
操舵士、純一郎が訪ねる。
「私たちはこれからひびきの連邦の本拠地、南米ジャブローに向かいます。」
「了解!これよりレジェンド・ベルはジャブローに向かいます!」
オペレーターの白雪美帆が琴子の命令を連呼した。
「・・大気圏を越えるんですね・・・」
純一郎がやや不安げにつぶやく。それを聞いた琴子は、普段からは考えられないくらいやさしく純一郎にフォローを入れる。
「大丈夫。機械が全部やってくれるわ。あなたは突入角度にだけ気を配って。」
そのころ、きらめき軍の追跡隊は補給を終え、レジェンド・ベルの動きを監視していた。
「・・なるほど。地上に降りてベルファスト基地か本拠地ジャブローを目指すってわけね。」
大気圏降下用小型船コムサイのブリッジから監視していた詩織の元へ、数人の兵士たちが寄ってくる。
「・・集まったわね。いい?20分後には大気圏に突入します!このタイミングで戦闘をしかけたという事実は、古今例がないわ。地球の引力にひかれて、大気圏に突入すれば、ザクとて一瞬のうちに燃え尽きてしまうでしょう。しかし、敵艦は今大気圏を突入するために全神経を集中している今こそ、ザクで攻撃する絶好のチャンスよ!第一目標、戦艦!第二目標、敵のMS!作戦時間は2分とないでしょうけど、諸君らであればこの作戦を成し遂げられるでしょう。期待します!出撃!!」
突然、戦艦レジェンド・ベルは警報の音に包まれた!
「琴子さん、敵襲です!ザクが迫ってきます!」
美帆がやや強い口調で報告する。
「なんですってぇ!く、ブリッジクルーは大気圏突入に全神経を集中!MS隊を!大気圏突入までなんとか持たせるのよ!」
「琴子さん!」
格納スペースから響介が通信する。
「あ、響介。MSは出られる?」
「はい。Mガンダムは光、Yガンキャノンは花桜梨さん、Sガンタンクは茜さんにやらせます。ハッチを開けてください!」
「了解よ!」
格納スペースではノーマルスーツ(宇宙戦用パイロットスーツ)に着替えた光、花桜梨、茜がそれぞれ担当のMSに乗り、発進に備えていた。まずは、光のMガンダムがカタパルトにセットされる。
「光・・作戦時間に気をつけて!」
「ありがとう響介くん!・・Mガンダム・光、いきま〜す!」
ゴオオオオ!
カタパルトから勢いをつけられ、Mガンダムが発進する!続いて、Yガンキャノンがカタパルトにセットされた。
「花桜梨さん・・・」
「大丈夫。光さんの援護はまかせて!」
「はい。よろしくお願いします!」
「・・Yガンキャノン・花桜梨、いくわよ!」
ゴオオオオ!
Yガンキャノンの発進を確認し、今度はSガンタンクがカタパルトにセットされた。
「茜さん、Sガンタンクはあまり宇宙戦向きじゃない。流されすぎないように気をつけて!」
「うん、ボクがんばるよ。・・Sガンタンク・茜、出ます!」
ゴオオオオ!
前線でザクと射撃戦を続けていた光に、花桜梨と茜が合流する。
「みんな!・・それじゃあ、私、突貫します!」
「光さん、援護します!」
「ボクは船の護衛を!」
3人は手早く担当を決めると、光のMガンダムと花桜梨のYガンキャノンは敵軍の方へ、茜のSガンタンクはレジェンド・ベルの付近で待機した。
「てええ!」
ザキュウウ!
光は出会い頭にまずザクを1機ビームサーベルで切り落とす。
「お、おのれ!」
そこに、後ろから来たザクがMガンダムに迫る!が、
チュド〜〜ン!!!!
突然爆発した。光が振り返ると、花桜梨のYガンキャノンが親指を立てている。どうやら花桜梨が240mmキャノンで撃墜したようだ。
3人のコンビネーションで半数くらいのザクを撃墜したころ、突然背後から赤いザクが迫ってきた!
「あれは、詩織!」
そう感じるやいなや、赤いザクはすばやくMガンダムの懐に入り、ヒートホークを振り下ろす!
「うわああ!」
光はこれを素早くシールドで防いだが、体勢は大きく崩れてしまう。
「ふふふ、MSの性能の違いが、戦力の決定的差ではないことを教えてあげる!」
そのころレジェンド・ベルは、前線に立つ光と花桜梨を突破してきたMSの処理におわれていた。
ドド!
ザクからの放火を浴び、船体が大きく揺れる。
「左舷前方弾幕薄いわよ!何やってるの!」
琴子が強い口調で激をとばす。そこに、弾幕放火を突破してきたザクが、ブリッジに向かってグレネードを発射しようとする。
「2時の方向から来ます!」
「く、緊急回避!」
オペレーターの美帆の報告を受け、操舵士の純一郎は船体を傾けさせながら下降させてこれを回避する。だが、そこに再びグレネードを発射しようとするザクがあった。
「く、やられる!」
純一郎が半ばあきらめかけたその時、ザクは何かを被弾し爆発した!それと同時にブリッジに通信が入る。
「みんな!大丈夫ですか!?」
それはSガンタンクの茜だった。いままで後方の守りについていた彼女が、前部からの奇襲に気づいて駆けつけたのだ。
「茜・・ありがとう、助かったわ。」
琴子が素直に礼を言った。
「いえいえ。それより、そろそろ限界でしょ?前線の二人に後退信号を!」
「ええ、分かってます。美帆、後退信号を!」
「了解!後退信号出します!」
詩織は再びヒートホークを振り下ろそうとした。
「光さん、あぶない!」
「ちぃ、邪魔をするな!」
そこに、花桜梨がビームライフルで詩織のザクに攻撃する。が、詩織はバーニアの反動を上手く利用してこれをかわした。
「白い奴、もらった!」
伏兵のザクが体勢の崩れた光のMガンダムに迫る!あと少しでヒートホークの届く範囲に到達する・・そのとき、
「く、やらせるもんかぁ!」
光はMガンダムの頭部のバルカンを発射した!不意をつかれたそのザクは、バルカンの弾丸全てを食らってしまう。
「う、あああ、そ、そんなところにバルカンがぁ・・・」
チュド〜〜ン!!!!
また一人部下を失い、詩織はとうとうキレた!
「なめるなぁ〜!!」
光のMガンダムにエルボーやキックをおみまいし、花桜梨のYガンキャノンに対してバズーカーをぶっ放した!
「きゃあああああああ!!」
「あううううう!!」
今度は光と花桜梨が不意をつかれ、詩織の攻撃をモロに食らってしまった!
「や、やったなぁ!」
今度は光の方もキレ、ザクの軍団に突貫していく!
だが、ほどなくして限界が来た。詩織と花桜梨と茜は既に帰還し、大気圏突入にそなえた。しかし、戦闘に夢中になっていたザク一機と光は、帰還が不能となってしまっていた。
そのままその2機は地球の重力に引かれ、大気圏に吸い込まれていく・・・
「しょ、少佐、助けてください!げ、減速できません!藤崎少佐、助けてください!」
「・・ザクには大気圏を突破する性能はないの。気の毒だけど・・でも、無駄死にじゃないわよ!」
詩織は少しうつむき加減につぶやいた。次の瞬間!
「うぁがうばあああああぁぁぁ・・・」
そのザクは大気圏の摩擦に耐え切れず、ついに燃え尽きた。
一方、光のMガンダムのほうも帰還が不能となっており、光は大ピンチに襲われていた。
「ううう、あ、熱い・・響介くん・・たすけて・・・」
Mガンダムのコクピットでは、摩擦熱の高熱に苦しめられている光がいた。もう、これまでなの・・光がそう思い始めた瞬間、計器の中のディスプレイが光りだした。
「え、これは、まさか!」
光はそのディスプレイに映し出されている操作のとおりにやってみた。すると、突然機体が何かで覆われ、幾分熱さが和らぐのが分かる。
「!! そうか!あのとき・・」
初めて光がこのMSに乗ったとき、レジェンド・ベルからマニュアルが転送された。つまり、今この機体にはMSのあらゆる局面での操作方法がインプットされていたのだ。とにかく、これでなんとかなりそうだった。
「光!無事だったか!」
なんとか大気圏を越えてきたMガンダムは、先に降下していたレジェンド・ベルの甲板に降り、光はブリッジでクルーとの再会を果たしていた。
「光さん、ご無事で!」
「ボクもうだめかと思ったよ!」
響介が、花桜梨が、茜が出迎える。
「みんな!心配かけてごめん!」
3人のパイロットたちは無事の生還を分かち合っていた。しかし、琴子と響介はやや暗い表情をみせている。
「・・琴子さん、ここはやはり・・・」
「・・ええ。きらめき領よ。降下のさいの奇襲で突入角度を狂わされたわ。」
なんとか地球に降りられたものの、レジェンド・ベル隊は詩織の二重の策にはまり、きらめき公国領内の真っ只中に降りてしまったのだ。
その事実を知るなり、クルー全員は暗い表情を見せる。
「・・すみません。私が不甲斐ないばっかりに・・・」
光はそういってクルーの面々に向かって頭をさげる。そのとき、響介はそんな光の両肩に手を乗せ、優しく諭した。
「気にするなよ。別に光のせいじゃないさ。だって、光は精一杯戦ったじゃないか。それに姉さ・・じゃなくって、詩織は戦術に優れた奴だしな。」
「・・うん。ありがと!」
そんな響介の言葉に光は笑顔で返す。
「しかしどうしましょう?ジャブローに打電して指示を仰ぎましょうか?」
美帆が琴子に訪ねる。が、琴子は首を横に振りながら答える。
「いいえ。ここは敵の領地内だということを忘れないで。暗号でも危険すぎるわ。ここは、私たち自力で脱出するしかないのよ。」
琴子の言葉に反応し、クルーに緊張の表情が走る。レジェンド・ベル隊の命がけの脱出劇が、今まさに幕を開けようとしていた。